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シーバイクロエ 公式編集

「ええ、ええ、もうわたしを呼んでくれることもありません!」  取り乱した祖母の手を、天明がしっかりと握っている。横目で見ているだけで、胸のむかつく眺めだった。 (ああ、これでおばあちゃんはこいつをしんじた) 「あなたのお孫さんは非常に濃い『影』の力に冒《おか》されています」  天明は悲しげに目を伏せて言った。 「かげのちから?」  祖母は子供のように天明の言葉を繰り返した。 「人間の体は生まれながらにして、生命エネルギー、つまりプラスの波動を持っています。同時にマイナスの方へ引き戻す力も働いている。その象徴が人間の影です。わたしは人間の影に触れることで、その人間が持っている病《やまい》を知ることができる」 「はあ……」  祖母《そぼ》は首をかしげつつもうなずいた。うそだよ、と少年は内心つぶやいた。 「時折、人間の生命力を食い尽くしてしまうような悪い影《かげ》が存在します。そのような強い『影』、負の波動を『カゲヌシ』と呼んでいます。『カゲヌシ』については、ご存じのように最近世間でも噂《うわさ》にもなっていますが、しょせん世間の人々はその真の意味を知りません」  天明《てんめい》の声がかすかに緊張《きんちょう》を帯《お》びたことに少年は気づいた。嘘《うそ》なりに核心に迫った話をしているのかもしれない。 「残念ながら、この子にとりついた『カゲヌシ』の力はおそろしく強い……わたしは嘘を申しません。完全な病の根絶はおそらく難《むずか》しいでしょう。ただ、私が天から与えられた力を使って治療《ちりょう》を施《ほどこ》せば、この子の余命が二倍以上に伸びることは保証いたします。ただ、そのためには私の側にも特別な準備が必要ですし、あなたにはさまざまなサポートをお願《ねが》いしなければならないが……」  少年は目を閉じた。どうしよう、と思った時、天明の意外な言葉が聞こえた。 「とりあえず、お孫《まご》さんと私を二人切りにしていただけますか?」 「さてと」  祖母を部屋から送り出して、ドアを閉めた瞬間《しゅんかん》に天明の顔つきが変わった。底光りのする目。口元には薄笑《うすわら》いを浮かべている。
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