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 と、まったく違《ちが》う男の声が、そのあどけない唇《くちびる》からこぼれたのだ。 「な……」 「ふむ、時間どおりだな。正確に精密に物事が流れることは、それだけでひとつの価値だ。まして魔法使《まはうつか》い同士の時間であれば、一秒は黄金の林檎《りんご》にも勝《まさ》ろう」 「まさか……人間を、|使い魔《アガシオン》にしてるん?」  ぞっとした顔で、穂波が漏らした。  やがて、ラピスの双降《そうぼう》は、別人の威厳《いげん》をもって開き、愉《たの》しげにいつきと穂波とを見上げた。 「はじめまして——と言っておこう。私がユーダイクス・トロイデだ。〈アストラル〉の伊庭いつきに、穂波・高瀬・アンブラーだな」  いつきは、愕然《がくぜん》と息を呑み、眼帯を押さえた。  じりじりと、右目の眼底から焼けつくような痛みが広がってくる。  その痛みこそが、呪力《じゅりょく》の視覚化であった。少女——ラピスの身体《からだ》から一本の糸《パス》が伸《の》びて、彼《かな》方《た》へと繋《つな》がっている。糸《パス》を通じて流れる膨大《ぼうだい》な呪力に、いつきの右目が悲鳴をあげているのだ。 (この人は……) 「昨日は、ラピスが世話になったようだな」  突然《とつぜん》、男の声がそう促《うなが》した。 「あ、あ、あ」 「どうした? 兄として礼を言っているだけだ。かしこまる必要もない」  ラピスの身体で言われると違和感《いわかん》があったが、これはうなずかざるを得ない。 「は、はい……」
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