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 トモヨが話にのってこないので、ビショット・ハッタは首をのばして、しゃくり上げるようにした。 「ラウの主力艦隊とゴラオンを二分することができなかったのが、残念です」 「そのとおりだ。が、これでよい」  ビショットは、ドレイクとの駆け引きのことなど説明する気はなかった。ただ、上機嫌にしてみせて、将兵たちの士気を阻喪《そそう》させないようにするだけと心に決めていた。  作戦司令室の中央のテーブルには、現在の艦位置《ポイント》を中心にした地図がひろげられ、数個の電球の光がその地図をうきたたせて、それぞれのデスクのスタンドが、士官たちの手元をうきぼりにしていた。  ふたつの壁には、それぞれ東西のユーロ地域の全体図がかかげられて、テーブル上の作戦地図と対照できるようになっていた。  ビショットはその部屋の正面に位置するデスクに、トモヨ・アッシュを呼びつけたのだが、これまでパイロットがこの部屋にはいったことはなかったから、テーブルのまわりの士官たちは、名うてのパイロットがどういう反応をみせるのか、ひそかな期待と反感をもって、ふたりの会話に聞き耳をたてていた。 「ゴラオンは、あれですな?」  トモヨは、テーブル上の針金の輪をぶらさげた小旗のひとつを顎でしめした。 「そうだ。あの表示と現実との誤差は、どのくらいと思うか?」 「旗の竿《さお》に糸でぶらさげている針金の円が、誤差をしめしているのなら、甘いようです。もっとうしろでしょう」 「そうか……とすると、ゲア・ガリングは前に出すぎているな……怒っているのか?」 「これでは、すぐに、聖戦士に捕捉されます」 「怖いのか?」 「パイロットは生き死にをかけています。当然でしょう。巨大な戦艦のなかにあるこの部屋は、暑くもなく寒くもない。しかも、すわりっぱなしで、戦場の空気が感じられないところで作戦を立て指令を出す。反吐《へど》がでます」 「だから、お前の意見をきこうというのだろう? ハッハハハ……」  ビショットにすれば、こういう無頼な言葉を、貴族出身の士官たちにきかせておきたいのだ。 「王ひとりのお心遣いが、すべてにいきわたらないのです。それが人の集りであるということは学びましたが……もうひとつ怖いものがあります」
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