ミュウミュウハートチャーム財布
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null「うーん。あれは六月十六日だったな」 「六月十六日?」  国男が驚いて、 「じゃ、五月二十四日が爆発で……なあんだ、たった二十日余りで建ったんですか」 「うん、バラックだけどなあ。そのうちに、がっちりしたのが建つそうだ」 「先生、今生徒何人になったんですか」  加奈江が言う。 「うん。十九人だ」 「十九人!? 四十何人もいたのに……」 「うん、十一人死んだし、あとはほかの土地に移ったからなあ」  先生は天井を見て、目をしばたたく。 「十九人か」  拓一の呟く声が暗い。 「うん。な、みんな、今まで日本中に、どれだけ小学校が建ったか知らんが、そして、めでたい開校式が……どれほどあったか知らんが……」  先生の声が途切れた。みんなはじっと先生の顔を見る。 「ここの開校式はつらかったぞ。まだ机も腰かけもない床に坐ってなあ。生徒たちはなあ。死んだ友だちのことを思って泣いたり、自分の家族や親《しん》戚《せき》のことを偲《しの》んで泣いたりなあ。祝辞を述べに来た来賓も、祝辞にならんのよ。吉田村長だって、わしだって……あんな開校式なんて、どこにもないべなあ」  みんなはうつむいた。今ここにこうして、菊川先生を取り囲んでいるだけでも、胸が一杯なのだ。生きていたら集まるはずの何人かの友だちのことや、これから頑張って生きていかねばならないわが身のことが、交《こも》々《ごも》胸に渦巻く。だからその開校式の時の子供の気持ちがよくわかるのだ。 「権太も死んだもなあ」